~“動かす”だけじゃない、“支える”だけでもない~
理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)として現場に出ると、毎日多くの患者さんと向き合うことになります。
評価し、訓練し、できる動作を増やしていく——それがリハビリの基本だと思っていた。
でもある日、患者さんとの何気ないやり取りの中で、こう感じた瞬間がありました。
「ああ、自分がやってるのは“身体を治すこと”じゃなく、“人生に関わること”なんだ」
この記事では、多くのセラピストたちが現場で実感した「リハビリの本質」について、患者さんとの関係を通じて気づいたことを掘り下げていきます。
◆ 「信頼関係が築けたときに、初めて“リハビリ”が始まる」
「最初はまったく言うことを聞いてくれなかったけど、毎日顔を出して会話を重ねるうちに、“先生の言うならやってみる”って言ってくれて。そこから一気に変わりました。」
技術だけでは動かない心も、信頼があれば自然と動き出す。
関係構築こそが、すべてのリハビリの起点なのだと気づかされる瞬間です。
◆ 「“目標”は数値ではなく、その人の生活にある」
「自主トレを頑張って、最初にできたことが“洗濯物を自分で干せた”という報告だった。病院でのADL訓練より、よっぽど意味があると思った。」
患者さんにとってのゴールは、「可動域を+10°にすること」ではなく、
“もう一度自分らしく暮らす”こと。
その人が大事にしている日常を見つけることが、リハ職に求められる“支援の本質”です。
◆ 「励ますより、“そばにいる”ことの力」
「言葉をかけなくても、毎日リハ室に来て顔を合わせるだけで、少しずつ表情が変わっていく方がいた。“あなたが来るだけで、安心する”って言われたとき、泣きそうになった。」
リハビリは、“寄り添う力”が試される仕事です。
訓練の中で結果が出ない日もあるけれど、「この人は自分の味方だ」と思ってもらえることが、最大の治療になる場合もあります。
◆ 「“やる気が出ない”の奥にある気持ちに目を向ける」
「拒否ばかりしていた方が、ふと“もう帰れないと思ってたから、やる意味がなかった”と漏らした。その瞬間、アプローチの方向がガラッと変わった。」
拒否、無関心、意欲低下――
そこには必ず“理由”があります。
技術で動かすのではなく、心に寄り添って一緒に歩く。
それが、本当の「リハビリ=再びその人らしい生活を取り戻す」支援につながるのだと実感します。
◆ リハビリの本質とは「技術×信頼=再び生きる力」
リハビリは「機能を回復させる技術」ではなく、
**「その人がもう一度、人生を歩いていく力を引き出すプロセス」**です。
✔︎ 関係性が土台になる
✔︎ ゴールは生活の中にある
✔︎ “そばにいる”ことも支援の一部
✔︎ 感情に寄り添うことが“やる気”を生む
そんな“気づき”が、臨床を重ねるごとに深まっていきます。
◆ おわりに:リハ職は、誰かの人生と並走する仕事
リハビリという言葉の語源には「再び適した状態に戻す」という意味があります。
それはただ「歩くようになる」「話すようになる」だけではなく、
その人がその人らしく、生き直す手助けをするということ。
患者さんとの関係の中で、私たちは**“治す”以上の価値ある仕事をしている**のだと、改めて胸を張って言えるようになった――
そんな声が、今この瞬間も全国のリハビリ現場から聞こえてきます。