~言葉・食べる・伝える――“当たり前”を支えるやりがい~
言語聴覚士(ST)は、話す・聞く・食べるといった**“生活に欠かせない機能”を支援する専門職**。
対象は、赤ちゃんから高齢者までと幅広く、支援内容も「ことば」「発声」「飲み込み」「認知」など多岐にわたります。
今回は、現場で働くSTたちが実際に語ってくれた、「この仕事を選んでよかった」と心から感じた瞬間をご紹介します。
◆ 1.「ありがとう、また話せてうれしい」と言われたとき
「脳卒中で失語症になり、まったく話せなくなっていた方が、初めて『ありがとう』と声に出して言ってくれたとき、涙が止まりませんでした。」
STの支援で“言葉を取り戻す”瞬間に立ち会えることは、この仕事の最大の魅力。
一語の重み、たった一声の喜びを共有できる職業は他に多くありません。
◆ 2.「もう一度、普通にごはんが食べられた」とき
「誤嚥リスクのある方に少しずつ段階を踏んで練習して、ついに“普通食”を食べた瞬間、ご本人もご家族も涙。私ももらい泣きしました。」
嚥下障害のリハビリは、命に直結する“食べる機能”を守る仕事。
“おいしく食べる”という当たり前の幸せを取り戻す手助けができるのは、STならではのやりがいです。
◆ 3.「子どもの声が増えた」と保育士に言われたとき
「発語の遅れていたお子さんが、ある日突然『ママ』と呼んだと聞いて鳥肌が立ちました。その子の世界が一気に広がったような感覚でした。」
小児分野のSTは、子どもの“ことばの芽”を育てる存在。
発語だけでなく、表情やコミュニケーションが豊かになる過程に関われるのは、教育と医療の架け橋のような喜びがあります。
◆ 4.「表情が明るくなった」と言われたとき
「言葉の問題だけじゃなく、本人の“自信”が少しずつ戻っていくのを感じられる瞬間に、この仕事の意味を実感します。」
STの支援は、単なる訓練だけではなく、その人の社会参加や自己肯定感の回復にもつながる。
「伝わる喜び」「聞いてもらえる安心感」は、人の心を前向きにします。
◆ 5.「あなたがいてよかった」とご家族に言われたとき
「患者さん本人だけでなく、ご家族から“相談できて安心した”と言ってもらえることが多く、STの存在意義を感じます。」
STは患者本人とだけでなく、家族や周囲との架け橋になる職種でもあります。
“伝えたいのに伝わらない”もどかしさを解消することで、本人・家族の双方に笑顔が戻る瞬間に立ち会えるのです。
◆ まとめ:「伝える・食べる・関わる」喜びを支える仕事
言語聴覚士の仕事は、一見地味に見えるかもしれません。
でもその本質は、“人と人をつなぎ直す”仕事です。
- 一言話せるようになった
- おいしく食べられるようになった
- 気持ちが伝わるようになった
そんな“あたりまえ”を取り戻せた瞬間に、STとしての喜びと誇りがあふれます。
「この人がSTで良かった」
そう思ってもらえる日が、何よりのやりがいになるのです。